タバコが人体へ与える影響とは？喫煙による健康被害とそのメカニズム

タバコは身体に悪影響を及ぼすということは自明の事実ではあるものの、具体的な影響について認識している人は多くはありません。タバコが与える影響やメカニズムを知ることで、喫煙をしない人はもちろん、喫煙者が禁煙をする後押しにもなります。本記事では、タバコが人体に与える影響とそのメカニズムについて解説していきます。

タバコによる健康被害とは

それでは、タバコによる健康被害の事例について見ていきます。疾病などの重大な病から、日常的に及ぼす悪影響もあるため、様々な事例を知り、理解を深めることが肝要です。

様々な健康疾患が引き起こされる

タバコを吸い続けると、さまざまな健康疾患が引き起こされるリスクが増大します。タバコの煙には、数百種類の有害物質が含まれており、それらの物質が身体中を巡ることで、数々の疾病を引き起こします。

たとえば、タバコの煙は悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減らす性質があります。善玉コレステロールは、血液中の不純物の除去や細胞の生成を行いますが、血液中の悪玉コレステロールの割合が増加することで血流を圧迫し、心筋梗塞や脳卒中を発症させる可能性が高まります。

さらに、血流の圧迫は高血圧を助長し、心臓への負担を大きくしてしまいます。また、タバコの煙が気道などに直接触れることで細胞を傷つけ、気管支炎や肺気腫といった疾病を引き起こします。

がんのリスクが高まる

タバコの吸いすぎによる疾病のなかで、もっともよく知られる病に、がんが挙げられます。タバコのタールという成分には、発がん性物質が多量に含まれており、肺がんや咽頭がんなどの直接触れる部分に限らず、身体を巡って胃がんや膀胱がんなど全身の発がんのリスクを高めます。重度の喫煙者の肺を黒くしてしまうのはこれらの発がん性物質による作用です。

依存によりストレスが増加する

また、タバコの依存性は一部のドラッグよりも強いと言われています。タバコを吸えない間はストレスが溜まり、依存が増すと他のことに集中できなくなるほどの状態となってしまいます。ストレスを感じる度合いは、タバコへの依存度に比例するため、日常的にタバコのことが頭から離れないという方であれば、本数を減らし、ゆくゆくは禁煙をすることが得策というのは間違いありません。

タバコの影響を受けるのは喫煙者だけじゃない

タバコの煙は、喫煙者が自ら吸う主流煙と、タバコの先端から発せられる副流煙の２種類に分けられます。非喫煙者が副流煙を吸うことで、体内にタバコの煙を入れてしまうことを受動喫煙といいます。この内、健康被害に対する影響が大きいのは、意外なことに副流煙です。主流煙は、吸う部分に付着しているフィルターにより、有害物質の一部を吸わない構造になっています。

しかし、副流煙にはフィルターのような有害物質を防ぐ術はなく、受動喫煙をした場合のがん発症やその他の疾病にかかるリスクは、喫煙者よりも高くなります。とくに、受動喫煙により血管が収縮し、心臓に十分な栄養などが行き渡らなくなる虚血性心疾患のリスクが顕著であるという報告もあります。

なぜタバコは健康に悪影響を及ぼすのか？喫煙のメカニズムを解説

それでは、タバコを吸い続けることで、実際にどのようなメカニズムにより人体へ悪影響を及ぼすのでしょうか。そのプロセスについて説明していきます。

タバコの煙には数百種類の有害物質が含まれる

まず、タバコの煙自体には数百種類もの有害な物質が含まれており、これらが体内の器官を刺激して様々な影響を及ぼします。この内、タバコ煙は気体内の極小な液体である粒子相、別名エアロズルと、気体相の2種類に分けられます。前者にはニコチンや様々な発がん性物質が含まれ、後者には発がん性物質の他に、一酸化炭素などの肺に大きな負担となる物質が含まれています。

タバコの煙が臓器に刺激を与え悪影響を及ぼす

タバコの煙が体内の細胞と結びつき、細胞の健全な形成や成長を阻害します。これにより、物質を適切に分解したり、吸収したりする機能を担う酵素の機能も低下し、結果的に遺伝子の発達に支障をきたすこととなります。

また、何らかの原因により肺に穴があき、肺がしぼんでしまう自然気胸と呼ばれる病気が存在します。喫煙者の間で、この自然気胸の発症割合が高いという報告もされています。その他の疾病については、上述の通り悪玉コレステロールが血中に蓄積することで血圧が上昇し、心筋梗塞や慢性閉塞性肺疾患、動脈硬化を引き起こす事例が挙げられます。

ヘモグロビンと結びつくことで酸欠状態に

喫煙者が息切れしやすいというイメージを持たれている方は多いかと思いますが、これはタバコの煙により酸素を吸入する能力が弱まることに起因します。血中の酸素は、ヘモグロビンと呼ばれる、赤血球内のたんぱく質が運搬することで心臓へ送られ、呼吸の手助けを行います。

しかし、タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結びつくことで、酸素を運搬する機能が弱まり、酸欠などの症状を引き起こします。この結合は数時間で解消されるものの、喫煙の頻度が多い人は慢性的に酸欠状態となり、息切れや肺の疾患につながります。

禁煙するには？タバコの健康被害から回復するプロセス

これまで、タバコによる人体への悪影響について詳細を見てきました。タバコを吸わないことでさまざまな疾病を予防することができるというのは自明ですが、重度の喫煙者にとって禁煙は簡単なことではありません。それでは、健康被害から身を守るため、推奨される方法について解説していきます。

禁煙することのメリットを理解する

まず、禁煙することによるメリットを理解して、モチベーションを高めることが前提となります。先述のような健康被害を防ぐことができるのはもちろん、日常的に疲れにくい身体になったり、体調が良くなったりすることによるパフォーマンスの向上など、具体的な効能について理解をすれば、禁煙に対して真剣に向き合うことができるようになります。喫煙者の方で、今は病気などを抱えていなくても、禁煙により日常生活が改善することを理解し、禁煙への決意を固めていきましょう。

地道な努力から続けていく

禁煙に限らず、新しいことを始めるときは、小さいことから始めていくことが重要です。たとえば、1日に1箱を吸う方であれば、最初の1か月は半分に減らし、翌月はさらに半分に減らすなど、段階的に喫煙本数を減らすことが効果的です。しかし、喫煙による健康被害をなくすには、本数を減らすのではなく、最終的に1本も吸わない状態を作ることが大切です。よって、最終目的である完全禁煙のタイミングだけはあらかじめ考えておきましょう。

置き換えによりストレスを軽減する

禁煙中にストレスが溜まってしまうという話はよく聞くことかと思います。禁煙がつらい時は、ガムや飴などで代用したり、気分を変えるために散歩や運動をしたりするなど、気分を紛らわせることが効果的です。タバコのことを頭から離れさせるために、自身の生活を見直してみることで、気が付いたときには禁煙が当たり前になっていることでしょう。

まとめ

本記事では、タバコがもたらす人体への影響について解説していきました。タバコの煙は、がんを始め、さまざまな疾病の発症リスクをもたらすことや、心臓への負担を増加させて日常生活への影響も与え、副流煙により周りの人を巻き込んでしまうというリスクも秘めています。百害あって一利なしというのはまさにその通りで、禁煙によるメリットを理解し、自身や周りの人々の健康を守るためにも、タバコを控えるというのは正しい判断となることでしょう。本記事が、タバコの影響についての理解を深めることに寄与できれば幸いです。

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